評価の甘い信販会社が利用している不動産調査会社では、親銀行の元行員が四、五人働いていた。こうなっては正確な鑑定ができるのか、はなはだ疑問だ。バブル期の傷跡として金融機関を苦しめてきた不良債権問題の裏には、ほとんど表には出ない不動産鑑定会社と金融機関の癒着があったし、鑑定業者選択の失敗があった。私は、不動産鑑定業は宅配就業者と同じだと思っている。品物を送るため配送業者を決めるとき、普通、業者がとりにきてくれるとか、店が近いとか、送料はいくらかかる、いつ届くかを考えて選ぶはずだ。しかし、だれも相手方に配送するときの業者のサービスについて考えないようだ。ある日、私が午後二時頃家に帰ったら、郵政公社と民間大手の宅配業者の二社の「不在持ち帰り票」がポストに入っていた。私は「今日はこれから家にいるが翌日は一日中不在」と二社に連絡した。民間の会社は「今日中にお届けします」との回答であったが、公社は「今日はもう配送できません。明日お届けします」とのこと。「明日は受け取る者がいない」といったが無視された。送る側は、送られる側に対する宅配便業者のサービスはどの会社も同じだと考えていて、受け取る側の都合を考えもしていないから、このようなことが起こるのだ。金融機関が不動産鑑定業者を選択するとき、料金がいくらで、いつ納品してくれるかを考えて選択するが、サービスの中身、すなわち評価書の中身というか質については、考えていないようだ。宅配便であれば受取人が発送人にサービスの悪い業者を以後使わないように言えるが、不動産鑑定では、金融機関は何年かあとになって、債権が不良化したのちでないと文句が言えない。それも鑑定会社が倒産していなければの話だ。不動産鑑定業者を選ぶときは、依頼時の条件だけで決めないよう、くれぐれもお願いしたい。わが社や私個人は幸い、バブルに巻き込まれて不動産を買うことがなかった。それは、たまたま金融機関の行動を見ていて、マスコミなどに「不動産価格は下がる」と唱えていたため、金融機関の担当者が不動産のよい出物(?)を持ってこなかったためだ。もし魅力的な物件を持ってきていたら、案外口とは裏腹に投資をしていたと思う。情報を持ってこなかった金融機関に感謝し、運のよさにほっとしている。
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