もし私が住居は着物みたいなものだ、と申しあげたら、はてな、と思われる方が沢山いられることと思います。冬には温い冬服を、春と秋にはさっぱりした合着を。夏はできるだけ涼しいスタイルを、とたいがいの人が服装に気をつかうのはなぜでしょうか。それは、いわずとしれたその気候に応じて体を快適にしていたいからです。住居についても、まったく同じようなことがいえるわけです。気候に応じて快適に暮せるよう、冬には冬向の、夏には夏向の家がほしいのです。
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戦前の話ですが、私の友人のお父さんが、冬向、春向、夏向、秋向と四つの家を持っていて、気候に応じてぐるぐる住みかえて住んでいるという話をしていました。考えてみるとゼイタクな話ですが、出来ればこんな良いことは無いはずです。しかし、戦前とはいえこんなゼイタクができた人々は限られた人々でしょうが、もう少し考えてみると、着物でも、合冬兼用だとか、合着のスカートやズボンで上着だけ涼しくすれば夏も使えるというように、一着の服でも一年中楽しく着ることができるのですから、一軒の家でも工夫によって一年中気持よく暮せるわけです。このことについては、皆さんがずっと長い生活の中で経験してこられて、いろいろ工夫され、特に変ったことではないのですが、案外着物についてほどは気をつかっていられない点もあるものです。着物のように考えれば、もっと工夫する余地があるようです。